中本信忠先生


講師:中本信忠 信州大学名誉教授 理学博士


講演テーマ
「生物屋の発想:水質浄化は微小生物群集の食物連鎖がカギだった」

講演要旨
 水を浄化する緩速(砂)ろ過技術は約200年前の英国で開発された。河川中の濁りは、単に細かな砂でゆっくりと砂ろ過すれば濁りが除けていると考えて緩速(砂)ろ過Slow Sand Filterと称された。病原菌までが除ける安全な水ができるとわかり世界中に普及した。その後、米国で濁りを凝集薬剤で除く急速ろ過Rapid Sand Filterが開発され、効率が良いイメージの新しい技術が普及した。日本も戦前は緩速ろ過の浄水場が建設されたが、戦後は急速ろ過が主流になってきた。
 中本は理学部生物学科で藻類の生態を研究し1975年に信州大学繊維学部応用生物学科に就職した。1984年から上田市の緩速ろ過池で繁殖する藻を研究し、藻は砂の表面で繁殖し光合成で酸素を生産し、動物の餌になり、動物が活躍しやすい環境にすることに気づいた。浄化の仕組みは砂層上部で活躍する生物群集、食物連鎖が浄化のカギであった。砂ろ過池は上から下への流れがあり生物群集は餌があるところにしかいなかった。緩速ろ過という名前では生物群集の活躍がカギとは連想できないので浄化の仕組みは誤解されていた。そこで2003年に食物連鎖を連想させる生物浄化法Ecological Purification System(EPS)と言い出した。生物活性を考え、従来の緩速ろ過を見直すと、水深は浅く、ろ過速度は速く、砂は大きい方が良いことがわかった。
 中本はJICA国際研修や海外で生物浄化法での浄水施設の建設の支援を現在も行っている。
 
講師プロフィール
 東京生まれ(1942年)。高校の生物部で顕微鏡生物の原生動物に驚いて東京都立大学理学部生物学科に進学、大学院で植物プランクトンの生態、藻類培養などを研究。信州大学繊維学部応用生物科学科に助手(1975年)。助教授、教授、2008年名誉教授。1984年から緩速ろ過池の藻の役割研究。日本各地、1994年から世界各地の緩速ろ過池の調査研究。2002年からバングラデッシュで緩速ろ過による浄化施設建設を支援し、その際に生物浄化法Ecological Purification Systemと言い出す。スリランカ、インドネシア、バングラデッシュ、サモア、フィジーなどで浄化施設建設に協力。著書に「生でおいしい水道水(2002年、築地書館)」、「おいしい水のつくり方(2005年、築地書館)」、2005年愛・地球賞(愛知万博)。2008年信州大学定年退職。現在もJICA国際研修に協力、世界各地へ生物浄化法の普及活動を行っている。
 

中本信忠先生のブログ
https://blogs.yahoo.co.jp/cwscnkmt

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